新石器時代・竜山文化の単耳杯|器と火の残響

竜山文化後期の陶杯は、
細く長い胴、外へ広がる口縁、
そして薄く軽やかな器壁で知られています。
それは日常器形の継承であると同時に、
当時の美意識が精緻さと比例の感覚へ向かう証でもあります。

本作の単耳杯は、まさにその系譜から着想を得ています。
外へ張る口縁は、形姿に静かな緊張を与え、
わずかに絞られた胴は、
内へ収まり外へひらく、呼吸のような律動を生み出します。

片側だけの耳は簡素に見えますが、
竜山陶器における最も特徴的な意匠のひとつ。
機能の延長であり、器形のリズムでもあります。

この古形が紫砂の胎土と出会い、
さらに三昼夜の柴焼きに入ることで、
素材・火・時間の新たな対話がはじまります。
紫砂の密度と砂性は、古器に新たな重さと触感を与え、
火炎と飛灰、高温は、唯一無二の痕跡を刻みます。

火色は控えめで、
深褐・煙紫・暗灰が静かに遷り変わり、
わずかな火痕は、
時の薄い灰がそっと積もったように器面にとどまります。
内側の色はさらに深く、火の内向する力を映し出します。

本作は「古」と「今」の重なりであり、
形は竜山に由来し、
骨格は紫砂が支え、
気は火によってふたたび与えられたものです。

最終的に姿を現したのは、
単なる考古形制の再現ではなく、
火によって本質を再確認された器——
単耳、外侈、細身、沈静、
それらすべてが火色の下で新たな意味を獲得しています。

それは一つの杯であり、
同時に、遠い古の線が現代に再び呼吸する姿でもあります。