新石器時代・三足造形の紫砂柴焼き杯
本作は、新石器時代の三足陶器を原形とし、
胎土に紫砂を用い、火に柴焼きを選びました。
古器の構造語彙の中に、
原初的で静かな器の気配をあらためて立ち上げています。
三足は力を分散させ、
器に「安定」と「軽さ」を同時にもたらします。
この“三点支持”の形は、
古代の生活知そのものであり、
同時に、現代の器に呼吸感と空間性を与えます。
杯体は三昼夜の柴焼きの中で火に洗われ、
炎の通った軌跡、灰が落ちて残した細い痕跡が
自然のままに器面へと定着します。
深褐・煙紫・暗灰が幾層にも重なる火色は、
まるで土の深層から温もりによって呼び覚まされた旧器のよう。
これは過去の復刻ではなく、
火を通して「器の本相」をあらためて理解する試みです。
土と火と形がここで出会い、
古意が静かで現代的な姿で立ち現れます。
落款は「一道茶舍」。